「授」

白川静『常用字解』
「形声。音符は受。受は舟(盤)の上下に手を加えて、盤の中のものを上の手(爪)で与え、下の手で受けるの意味となり、“さずける” と“うける”の両方の意味がある。のち受にさらに手へんを加えた授は“さずける”の意味に用いる」

[考察]
受に「盤の中のものを上の手で与え、下の手で受ける」という意味はない。これは字形の解釈に過ぎない。図形的解釈と意味を混同するのは白川漢字学説の特徴である。
受と授は関係が深い。AからBに物を与えてこれをうけ取るという行為は一つの行為であるが、A→Bの方向とA←Bの方向の違いがある。日本語や英語では別の言葉で呼ぶが、古典漢語ではともにdhiog(呉音でジュ、漢音でシウ)と呼び、一語である。しかし文字で使い分ける。A→Bの方向(さずける)を授、A←Bの方向(うける)を受と書く。受も授も語史が古い。授は次の用例がある。
 原文:還予授子之粲兮
 訓読:還らば予子シの粲を授けん
 訓読:あなたが帰宅されたら 私はあなたに食事を差し上げます――『詩経』鄭風・緇衣

授は「さずける」の意味で使われている。授は「受(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析する。受と授の関係については793「受」で述べたので繰り返さない。