「囚」

白川静『常用字解』
「会意。囗(かこみ)の中に人を捕えて入れている形で、“とらえる、とらわれる、とらわれびと”の意味となる」

[考察]
ほぼ妥当な字源説だが、言葉という視点がないから、なぜとらわれることをシュウというのかが分からない。シュウは囚という漢字の読み方ではなく、「とらわれる」を意味するシュウという言葉の読み方である。音とは漢字の音ではなく、漢語の音である。このことを押さえないと漢字は理解できない。
言葉という視点から囚を見てみよう。囚は次のような文脈で使われている。
①原文:囚蔡叔于郭鄰。
 訓読:蔡叔を郭鄰に囚ふ。
 翻訳:蔡叔[人名]を郭鄰[地名]で牢獄につないだ――『書経』蔡仲之誥
②原文:在泮獻囚
 訓読:泮ハンに在りて囚を献ず
 翻訳:泮[貴族の学校]で捕虜を献上する――『詩経』魯頌・泮水

①は捕まえて牢屋に入れる意味、②は捕えられて獄につながれた人(とりこ)の意味で使われている。これを古典漢語ではd(z)iog(呉音でジュ、漢音でシウ)という。これを代替する視覚記号として囚が考案された。
囚は収・守・手などと同源の語である。これらは「枠で囲む」「枠の中に入れる」というコアイメージがある。人を捕えて枠(牢屋など)に入れることをd(z)iogというのである。この行為を図形化したのが「囗(囲い、枠)+人」を合わせた囚である。人を囲いの中に入れる情景を設定している。この図形的意匠によって①②を意味するd(z)iogを表記した。