「衆」

白川静『常用字解』
「会意。古い字形では、囗と三人とを組み合わせた形。囗は都市を囲む城郭の形。城郭の下に三人が並んで立つ形を加えて、都市の中に多くの人がいることを示し、“多くの人、おおい” の意味となる」

[考察]
字形から意味を導くのが白川漢字学説の方法である。囗(城郭)+三人→多くの人という意味を導く。
衆の字体は「日+众」(甲骨文字・金文)→「目+众」(篆文)→「血+众」(楷書)と変わった。楷書の衆は篆文が変化したもので、血では意味をなさない。甲骨文字では「日+众」が多い。白川は「囗+众」としたが、誤解であろう。
众(人が三つ)だけで「多くの人」を表しうるが、なぜ「日」なのか、「目」なのか。おそらく具体的な場面や情景を設定するための補助記号(限定符号)であろう。甲骨文字は太陽の下に人がいっぱい集まっている情景、篆文は監視の下に大勢の人が集まっている情景である。何らかの作業や集会の場面が想定されているのかもしれない。
古典漢語では多くの人々をtiong(呉音でス・シュ、漢音でシュウ)といい、これを衆の視覚記号で再現させる。この語は充・蓄・終などと同源で、「いっぱい満ちる」というイメージがコアにある。「いっぱい満ちて、入れる余地がないほど多い」というイメージにも転化し、大勢の人をtiong(衆)というのである。