「集」

白川静『常用字解』
「会意。隹は鳥の形で、鳥の意味となる。古くは雧に作り、多くの鳥が集まり、木に止まる形で、“あつまる” の意味となる」

[考察]
字形から意味を導くのが白川漢字学説の方法である。隹(鳥)+木→多くの鳥が集まり木に止まる→あつまるという意味を導く。
「字形→意味」の方向に漢字を見ると誤ることが多い。本項はたまたまうまく説明できた。しかし「意味→字形」の方向に漢字を見るのが正しい筋道である。意味は言葉にあり、言葉の使われる文脈から知るのである。集は次の用例がある。
①原文:黃鳥于飛 集于灌木
 訓読:黄鳥于(ここ)に飛び 灌木に集まる
 翻訳:コウライウグイスは飛び交って 群れ木に集まる――『詩経』周南・葛覃
②原文:天監在下 有命既集
 訓読:天監(かんが)みて下に在り 命有りて既に集(な)る
 翻訳:天は下界をみそなわし 天の命はすでに成った――『詩経』大雅・大明

①は多くのものが一所に寄り合う(あつまる)の意味、②は一つにまとまって仕上がる(成る)の意味で使われている。これを古典漢語ではdziәp(呉音でジフ、漢音でシフ)という。これを代替する視覚記号として集が考案された。
王力(現代中国の言語学者)は集・雑・輯・萃を同源とする(『同源字典』)。ほかに葺シュウ(草を寄せ集めて屋根をふく)も同源である。これらの語には「(いつくかのものが)一所に寄り集まる」というコアイメージがある。一所に集まるとまとまりができるから、「まとまって仕上がる」というイメージに展開する。以上は語源から集を見た。次は字源。
集は「隹(とり)+木」と分析する。これで鳥が木の上に止まっている情景を暗示させる。篆文では雧の字体もある。雥は隹を三つ重ねた形。「雥+木」を合わせて、多くの鳥が木の上に止まっている情景を設定した。鳥も木も捨象して、「(多くのものが)一所に寄り集まる」ことをこの図形で暗示させている。
白川は②の意味への転義について、「おそらく鳥の集散する状態によって占う鳥占いによってことを決め、そのことが成就するの意味であろう」と、証拠のない言語外的事実から転義を説明している。