「醜」

白川静『常用字解』
「形声。音符は酉。酉は酋しゅう(古い酒)ともと同じ字であった。(醜は)酒を酌んで儀礼を行っている姿であり、醜の儀礼を行う人の姿から、“みにくい” の意味となる」

[考察]
白川は殷代の紋章にある図から醜を解釈している。祟りを祓うために醜の儀礼を行う人の姿が普通とは異なり醜いとされたという。だから醜は「みにくい」の意味になったという。
文字でもない図像から意味を導くのは奇妙である。意味とは「言葉の意味」であって文字の形にあるわけではなく、まして文字でもない図像に意味があるわけでもない。図像から意味を読むという場合の意味は言葉を用いた解釈であろう。
意味は字形に求めるべきではなく、言葉の使われる具体的文脈に求めるべきである。古典に次の用例がある。
①原文:以謹醜厲
 訓読:以て醜厲を謹ましめよ
 翻訳:醜いやからを謹慎させなさい――『詩経』大雅・民労
②原文:言之醜也
 訓読:言の醜きなり
 翻訳:[男女の]睦言は聞くに堪えないものだ――『詩経』鄘風・牆有茨

①は形が悪い、見苦しいの意味、②は行いなどがみっともないの意味である。これを古典漢語でt'iog(呉音でシュ、漢音でシウ)という。これを代替する視覚記号として醜が考案された。
醜は美意識に関わる言葉である。古典漢語ではかどのある形やまっすぐの形は良い・正しいのイメージと結びつき、斜めの形や曲がる形は悪いのイメージと結びつく傾向がある。また、「細長い」のイメージは美しいのイメージ、これに対して「短い」のイメージは醜いのイメージと結びつく傾向がある。しぼんだり縮んだりした形は――(まっすぐ)が∧∧(ぎざぎざ)の形になるから、「短い」のイメージになり、これも「みくくい」のイメージにつながる。
醜は「酉ユウ(音・イメージ記号)+鬼(限定符号)」と解析する。酉は酋(酒を搾る人)や酒(原料を搾って作る「さけ」)と同源で、「搾る」「縮める」というイメージがある(789「酒」を見よ)。鬼は亡霊と関係があることを示す限定符号。限定符号はカテゴリー・意味領域を示す場合や、場面設定をする働きのほかに、比喩的限定符号もある。醜は形が縮んで、亡霊のように見苦しい状況を暗示させる。この図形的意匠によって、姿形や容貌がいやな感じを与えるほど見苦しいことを暗示させる。