「十」

白川静『常用字解』
「指事。数を数えるときに使う算木で数を表し、横一本は一、縦一本の|が十であった。“とお” の意味に用いる。金文では|の中央の肥点(●)を加え、のち十の字形となった」

[考察]
字形から意味を導くのが白川漢字学説の方法であるが、なぜ縦の形が「とお」の意味になるのか分からない。また算木で数を表す場合、一本の横線の一が「ひとつ」の意味になるのは分かるが、なぜ縦線の|が「とお」の意味になるのか分からない。
字形から意味を引き出すのは限界がある。むしろ誤った方法である。意味は「言葉の意味」であって、字形に意味があるわけではない。意味は言葉が使われる文脈にある。
古典漢語における数の数え方は十進法である。1から数えて10まで進むと、10から新しい単位を設け、次からはそれを起点として再び1から始め、100まで数える。ここで100を単位とし、また1から始めて1000に至る。このように10、100、1000という10の倍数を節目として数を数える。これが十進法である。
10という数は最初の節目の単位である。一から九までの基数を一まとめにする単位が十である。古典漢語ではこれをdhiәp(呉音でジフ、漢音でシフ)という。この語は拾と同源で、「合わせて一つにまとめる」というイメージがある(805「拾」を見よ)。これは「締めくくる」というイメージにもなる。一から九までをまとめて締めくくる数がdhiәpである。これは単位としての命名である。だから「とお」という数詞は一十という。ただし一は省略されることが多い(一百、一千の一も省略できるが、一万以後は省略できない)。
dhiәpを表記する図形が|(甲骨文字の字体)である。これは一つにまとめて締めくくる数であることを示す象徴的符号である。縦線にしたのは横線の一(数の1)と対応させるためでもある。