「汁」

白川静『常用字解』
「形声。音符は十。祭祀に用いる香りのついた酒のことを汁献しゅうけんという。多くのものをまぜて作るので汁というのであろう」

[考察]
汁献は『周礼』にある言葉で、注釈によると献は莎サの音で、酒を漉す方法の意味。香ばしい汁を漉し出した酒が汁献である。だから汁献は酒であるが、汁は「しる」の意味である。
形声を会意的手法で説くのが白川漢字学説の特徴であるが、十の説明がない。あるいは十を「多い」「多くのものをまぜる」という意味とするのであろうか。
汁は古典に次の用例がある。
 原文:行秋令則天時雨汁。
 訓読:秋令を行へば則ち天時に汁を雨(ふ)らす。
 翻訳:[秋でないのに]秋の政令を行うと、時として汁が降ってくる――『呂氏春秋』十一月紀
汁は水のほかの物質を含んだ液体、つまり「しる」の意味である。これを古典漢語ではtiәp(呉音・漢音でシフ)という。これを代替する視覚記号が汁である。
汁は「十(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と解析する。十は「(いくつかのものを)まとめて締めくくる」というイメージがある(819「十」を見よ)。これは「いろいろなものを一つに集め合わせる」というイメージに展開する。汁は水のほかにいろいろの成分の合わさった液体を暗示させる。