「住」

白川静『常用字解』
「形声。音符は主。主は灯火の形で、丶が灯心が燃えている炎の形で、その下は鐙あぶらざらとその台である。灯火の台は直立しており、柱と似ているところがある。柱をならべて建物を建てて人の住む所を住という」

[考察]
ほぼ妥当な字源説ではあるが、「柱をならべて建物を建てて人の住む所」が住の意味とは変である。単に「すむ」「すまい」の意味であろう。
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くから、このような意味の取り方になる。つまり図形的解釈と意味を混同しがちである。また余計な意味素が意味に混入する。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、語源的に意味を説明する方法である。住は古典に次の用例がある。
①原文:住建共者客邪。
 訓読:建ケンを共キョウに住(とど)まらしむる者は客か。
 翻訳:建[人名]を共[地名]にとめさせたのは遊説の士であったか――『戦国策』斉策
②原文:凡人居住山林及暫入山、皆可用。
 訓読:凡そ人、山林に居住し及び暫く山に入るに、皆用ゐるべし。
 翻訳:人が山林に住む場合や暫く山に入る場合に、[呪符を]使用するのがよい――『抱朴子』登渉

①はじっと止まる(ある場所にとどまる)の意味、②は場所を決めて、そこにとどまって住む意味に使われている。これを古典漢語ではdiug(呉音でヂウ、漢音でチウ)という。これを代替する視覚記号として住が考案された。
住は「主(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。主は炎が立って燃えている姿から、「⊥の形にじっと立つ」「じっと立って動かない」というイメージがある(780「主」を見よ)。住は人がある場所に立ち止まって動かない情景を設定した図形。この図形的意匠によって①の意味をもつdiugを表記する。「すむ」は①からの派生義で、六朝時代以後に現れる意味である。