「銃」

白川静『常用字解』
「形声。音符は充。充は腹の大きい肥満した人の形で、丸い穴のあるものの名をいうのに転用された。玉篇に“銎あななり”とあり、斧の柄をさし込む穴をいう。鉄砲の意味に用いるのは銃口がその穴に似ているからであろう」

[考察]
充は肥満した人の形というが、そんな形には見えない(821「充」を見よ)。また、肥満した人の形から、丸い穴のあるものの名に転用されたというが、この転義は理解し難い。
銃は『広雅』(三国魏の張揖撰)に初めて出る字である。 斧の柄の孔の意味であったようである。充には「中身が詰まる」というイメージがある(821「充」を見よ)。これを利用して「充(音・イメージ記号)+金(限定符号)」を合わせた銃によって、斧の頭にある柄を詰め込む孔を暗示させる。
近世になって小型の火器が発明された際、弾丸を詰め込んで発射する道具に銃の名がつけられた。「中に詰め込む」というイメージが共通であることに因む。