「暑」

白川静『常用字解』
「形声。音符は者。日は日光。日に照らされて“あつい” の意味となる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴がある。しかし本項では会意的に説明できず字源を放棄している。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉え、語源的に意味を説明する方法である。音と関わる部分を単なる音符とかたづけては漢字を理解することはできない。音符は発音符号ではなく、記号素の読み方を暗示させると同時にイメージを表す部分であり、その言葉の基幹記号をなすものである。音符という用語はふさわしくなく、音・イメージ記号と呼ぶのがよい。
語源については古人がすでに「暑は煮なり」と述べている(『釈名』)。煮だけではなく者のグループ(者・著・箸・都・緒・書・署・諸・儲・猪など)全体と関係がある。これらは「一所に集中する」「くっつく」「定着する」というコアイメージをもつ。暑はこれら同源語群の一つである。
暑は「者(音・イメージ記号)+日(限定符号)」と解析する。者は「(多くの物が)一所に集中する」というイメージを表す記号である(759「者」を見よ)。暑は日光の熱が集中する状況を暗示させる。この図形的意匠によって、「あつい」の意味をもつ古典漢語thiag(呉音・漢音でショ)を表記する。
暑は語史が非常に古く次の用例がある。
 原文:二月初吉 載離寒暑
 訓読:二月初吉 載(すなは)ち寒暑に離(かか)る
 翻訳:時は二月の初め 寒さ暑さにめぐりあう――『詩経」小雅・小明
暑は寒(さむい)の対語として使われている。