「助」

白川静『常用字解』
「会意。且しょは鉏すきの形。力は耒すきの形。鉏は草を切るもの、耒を土を掘り起こして砕くもので、合わせて耕作を助けるの意味となる」

[考察]
且と助は音のつながりがあるから形声のはず。白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴がある。且(すき)+力(すき)→耕作を助けるという意味を導く。
「且」の項では俎(まないた)の形としている(855「且」を見よ)。且をまないたの形とする説は白川以外にもある。しかし「すき」の形にはとうてい見えない。また力を耒の形とする説も白川以外にもあるが、わざわざ異説を立てたとしか思えない。とうてい受け入れ難い。
すきを二つ合わせて、「耕作を助ける」の意味という。しかしこんな意味は助にない。意味とは「言葉の意味」であって字形から出てくるものではない。言葉の使われる文脈から出るものである。助は古典で次の用例がある。
 原文:群公先正 則不我助
 訓読:群公先正 則ち我を助けず
 翻訳:御先祖様も賢臣たちも 私を助けてくれぬ――『詩経』大雅・雲漢

助は力を添えてたすける意味で使われている。これを古典漢語でdzïag(呉音でジョ、漢音でソ)という。これを代替する視覚記号として助が考案された。
助は「且(音・イメージ記号)+力(限定符号)」と解析する。且は段々と上に重ねることを示した象徴的符号で、「上に重ねる」というイメージを表す記号である(855「且」を見よ)。助は人の足りない力の上に別の力を重ね加える状況を暗示させる図形である。この図形的意匠によって上記の意味をもつdzïagを表記する。
『孟子』に「助は藉シャなり」という文章がある。藉は「ある物の上に別の物を重ね加える」というイメージのある語である(具体的文脈で実現される意味は「敷く」であるが、そのコアにあるのが「重ねる」のイメージである)。非常に古い時代に助を語源的に見事に捉えていた。