「肖」

白川静『常用字解』
「形声。音符は小。説文に“骨肉相似るなり”とあり、“にる”の意味とする。肖は小さな肉が骨に連なっている形で、屑はくず、梢はこずえであるから、肖は小さいものをいう語である」

[考察]
小から「にる」の意味が説明できないので、肖全体を象形と見て、「小さな肉が骨に連なっている形」とする。その形から「小さいもの」という意味を導く。
「小さな肉が骨に連なる形」とはどういう物であろうか。想像しにくい。
字形から意味を引き出すのは無理である。意味は「言葉の意味」であって、意味を字形から引き出すのは誤りである。言葉の使われる文脈に求めるべきである。肖は古典に次の用例がある。
 原文:乃審厥象、俾以形旁求于天下、説築傅巖乃野、惟肖。
 訓読:乃ち厥(そ)の象を審らかにし、形を以て天下に旁求せしむ。説エツ、傅巌フガンの野に築くに、惟(こ)れ肖(に)たり。
 翻訳:そこで彼の姿を詳細に知らせて、世界中の人にその形を捜索させた。説[人名]が傅巌の野に像を築くと、彼の姿にそっくりであった――『書経』説命

肖は原物に似る、原物に似せるという意味で使われている。これを古典漢語ではsiɔg(呉音・漢音でセウ)という。これを代替する視覚記号として肖が考案された。
肖は「小(音・イメージ記号)+肉(限定符号)」と解析する。小は「ばらばらに削ぎ取る」というイメージがあり、このイメージは「小さく削る」というイメージに展開する(872「小」、648「削」を見よ)。肉は肉体・身体と関わる限定符号。限定符号は図形的意匠を作るため場面を設定する働きがある。肖は人体の塑像を作る場面を設定する。素材を削って原物に似せた小さいな像を造る情景を暗示させる。この図形的意匠によって、上記の意味をもつsiɔgを表記する。