「沼」

白川静『常用字解』
「形声。音符は召。神霊を迎える霊台のまわりにある大きな池を霊沼といい、沼沢の地は神霊のある所とされたので、沼という呼び名には何らかの神聖感を含むものもあろうと思われる」 

[考察] 
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では召からの説明ができず、字源の体をなしていない。
古典の注釈に「沼は池なり」「沼は小池なり」とあり、沼は池とほとんど同義だが、字書には「円なるを池と曰ひ、曲なるを沼と曰ふ」とあり、沼と池を形状の違いとして認識していたようである。
沼は「召(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と解析する。召は「⁀形や‿形に曲がる」というイメージがある(875「召」を見よ)。沼は周囲が⁀形や‿形に曲がった水たまりを暗示させる。この意匠によって、城を丸く取り巻く池(ほり)に対して、山間の曲がりくねった池(沼沢)を意味する言葉を表記する。日本では沼を「ぬま」に当てた。「ぬま」は湖の小さなものの意味(『岩波古語辞典』)。