「消」

白川静『常用字解』
「形声。音符は肖。肖は骨に連なっている末端の小さな肉で、末端のものをいう。それで水が引いて消えることを消という」

[考察]
「骨に連なっている末端の小さな肉」とはどういう物か。想像しにくい。また「末端のもの」という意味から、「水が引いて消える」という意味に展開するだろうか。肖に「末端のもの」という意味はないし、消に「水が引いて消える」という意味もない。
意味とは字形に求めるべきものではなく、言葉の使われる文脈に求めるべきものである。消は古典に次の用例がある。
①原文:雨雪瀌瀌 見晛曰消
 訓読:雨雪瀌瀌ヒョウヒョウたり 晛ケンを見れば曰(ここ)に消ゆ
 翻訳:雪が盛んに降り積もっても 日の熱気に会えばたちまち消える――『詩経』小雅・角弓
②原文:君子道長、小人道消也。
 訓読:君子は道長じ、小人は道消するなり。
 翻訳:君子は道が伸びていくが、小人は道が衰える――『易経』泰

①は形がなくなる(きえる)の意味、②は勢いがなくなる(衰える)の意味で使われている。これを古典漢語ではsiɔg(呉音・漢音でセウ)という。これを代替する視覚記号として消が考案された。
消は「肖(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と解析する。肖は「小さく削る」「小さくばらばらになる」というイメージがある(879「肖」を見よ)。消は水が土砂を削って小さくばらばらになる状況を暗示させる。この図形的意匠によって①の意味をもつsiɔgを表記する。