「症」

白川静『常用字解』
「形声。音符は正。病状をいう字で、病状を症状という。古い文献には見えないもので、近世以来の俗字である。古くは証・徴が用いられた。 すなわち病状を示す証拠とされる徴候をいう字で、証・徴の字義のうち、病状に関する意味だけに限定して症の字が作られた。音符の正を部首字の疒に加えたものである」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなくすべて会意的に説くのが特徴であるが、本項では正からの説明がない(字源の放棄)。証も同じである。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉え、語源的に意味を説明する方法である。症の用例を見てみよう。
 原文:病症凍攣。
 訓読:病症は凍攣なり。
 翻訳:現れる病気の症状は寒さに凍えて痙攣することだ――『易林』巻二
症は病気の徴候の意味で使われている。上の文献は漢代のもの。症は漢代以後に創作された漢字である。漢代以後の文字の造形法も古典時代の漢字の原理に則ったものが多い。
症は「正(音・イメージ記号)+疒(限定符号)」と解析する。正は「まっすぐ」というイメージがある(「正」で詳述)。「まっすぐ」は「(空間的に)直線的でまっすぐ」というイメージだけでなく、「何の妨げもなくストレートに」というイメージでもある。症は体内の病気がまっすぐに(ストレートに)体外にしるしを現す状況を暗示させる。この図形的意匠によって上記の意味をもつtiәng(呉音・漢音でショウ)を表記した。