「称」
正字(旧字体)は「稱」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は爯。爯は冉(はかりの重り)を手(爪)で持ちあげる形。禾は穀類。穀類をはかりにかけることを称といい、“はかる”の意味となる」

[考察]
形声の説明原理がなくすべて会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。爯(はかりの重りを手で持ちあげる)+禾(穀類)→穀類をはかりにかけるという意味を導く。
図形的解釈をストレートに意味としている。だから「穀類」という余計な意味素が意味に入り込む。意味はただ「(重さなどを)はかる」である。
古典における稱の用例を見てみよう。
①原文:稱生勝。
 訓読:称は勝ちを生ず。
 翻訳:敵味方の兵数を計ることが勝利をもたらす――『孫子』形
②原文:稱彼兕觥 萬壽無疆
 訓読:彼の兕觥ジコウを称(あ)げ 万寿疆(かぎ)り無く
 翻訳:サイの角さかずきを高く上げ 「いつまでも長生きを」――『詩経』豳風・七月
③原文:彼其之子 不稱其服
 訓読:彼の其の子 其の服に称(かな)はず
 翻訳:お慕い申すあの方は 服に似合わぬいくじなし――『詩経』曹風・候人

①は重さなどをはかる意味、②は持ち上げる意味、③はバランスが取れて釣り合う意味で使われている。これを古典漢語ではt'iәng(呉音・漢音でショウ)という。これを代替する視覚記号として稱が考案された。
稱は「爯ショウ(音・イメージ記号)+禾(限定符号)」と解析する。爯は「爪+冉」と分析する。冉は冓や再の下部と同じ。再は「一+冓の略体」だが、爯も「爪+冓の略体」である。冓は上下が対称形の構造物の形で、「(上下が)釣り合う」「バランスよく組み立てる」というイメージを示す記号になる(576「構」を見よ)。爪は下向きの手の形で、手の動作に限定する符号。爯は「冓の略体(イメージ記号)+爪(限定符号)」と解析し、手で物を左右にバランスを取って持ち上げる状況を暗示させる。禾は穀物と関わる限定符号。限定符号は図形的意匠を作るための場面設定の働きもある。かくて稱は秤を持ち上げて左右にバランスを取って穀物をはかる場面が設定される。この図形的意匠によって、二つのイメージを表すことができる。一つは「持ち上げる」というイメージ、もう一つは「バランスを取る」というイメージである。物をはかる行為はこの二つのイメージが組み合わさったものである。
意味はコアイメージによって展開する。「持ち上げる」というイメージから①②の意味が実現された。ほかに相手を持ち上げるようにして誉め上げるという意味に展開する(称賛・称揚の称)。
「バランスを取る」というイメージから③の意味が実現される。また、実(中身)と釣り合った名(呼び名)という意味(名称の称)、~と呼ぶの意味(称呼の称)にも展開する。
白川は「称はかって重りに相当する重さになることを“かなう”といい、上に持ち上げて称はかるので“あげる”、称げて称はかるので“ほめる”の意味にも使う」と説明している。白川漢字学説には意味展開を合理的に説明する理論がない。