「紹」

白川静『常用字解』
「形声。音符は召。金文の紹の字は卲の形に作られており、卩は跪く人の形であるから、ᄇ(祝詞を入れる器の形)を供えて神霊の降下することを祈り、降下してきた神霊を迎えて拝む形である。糸は継続・継承の意味である。紹は“つぐ、ひきつぐ、うけつぐ”の意味に用いる」

[考察]
887「昭」の項では「もとの字は卲に作る」とあり、本項では「紹の字は卲の形に作る」とある。紹と昭は全く意味が違うのに同じ卲から説明するのは変である。
本項では「神霊の降下を祈り、降下してきた神霊を迎えて拝む」ことと、紹の「つぐ、ひきつぐ、うけつぐ」の意味と何の関係があるのだろうか。「糸は継続・継承の意味である」というのもおかしい。糸にそんな意味はあり得ない。中途半端な字源 説である。
紹の古典での用例を見てみよう。
 原文:紹復先王之大業。
 訓読:紹(つ)ぎて先王の大業を復す。
 翻訳:前の王の大業を受け継いで復興させる――『書経』盤庚
紹は受け継ぐ意味で使われている。これを古典漢語ではdhiɔg(呉音でゼウ、漢音でセウ)という。これを代替する視覚記号として紹が考案された。
紹は「召(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。召は刀にコアイメージの源泉がある。刀はみねが⁀の形に、あるいは刃が‿の形に曲がった武器である。刀は「⁀の形や‿の形に曲がる」というイメージを示す記号になる。一(直線)が⁀の形に曲がると空間的に縮まる(狭くなる)。だから「⁀の形に曲がる」というイメージは「(近くまで)引き寄せる」というイメージにも転化する。召は手首を⁀の形に曲げておいでおいでという言葉をかけつつ、A点にあるものをB点に近づけさせる(引き寄せる)状況を暗示させる図形である(875「召」を見よ)。だから召は「引き寄せる」というイメージを表す記号になる。糸は糸に関わる限定符号。限定符号は図形的意匠を作るための場面設定の働きもある。かくて紹はAの糸を引き寄せてBの糸につなげる情景を設定した図形。この意匠によって上記の意味のdhiɔgを表記する。
意味はコアイメージによって展開する。「引き寄せる」というコアイメージから、第三者がAをBに引き寄せて会わせる(二人を引き合わせる)という意味に展開する。これが紹介の紹である。