「掌」

白川静『常用字解』
「形声。音符は尚。説文に“手中なり” とあり、“手のひら、たなごころ”の部分をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では尚からの説明ができず、字源を放棄している。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉えて、語源的に意味を説明する方法である。手の甲の反対側を日本語では「てのひら」という。「ひら」は平である。平らな面を捉えて「てのひら」という。漢字の掌も同じ発想から生まれた語である。
掌は「尚(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析する。尚は「向+八」から成る。向は窓の意味があるが、実体ではなく機能に重点がある。窓の機能は明かりを採ること以外に、気(空気)を出し入れすることである。八は左右に分かれることを示す記号である。したがって尚は室内の空気が抜けて空中に分散する状況を想定した図形である(880「尚」を見よ)。この図形的意匠によって、上昇に視点を置くと「上に高く上がる」というイメージ、分散の姿に視点を置くと「平らに広がる」というイメージも表せる。後者を用いて、掌は手の平らに広がった部分を暗示させる。