「焼」
正字(旧字体)は「燒」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は堯。堯は焼竈の中に土器(土)を積みあげた形。これに火を加えて焼きあげることを焼という。土器を焼きあげることから、のちすべて物に火を加えて“やく、たく”の意味となる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴がある。堯(竈の中に土器を積み上げる)+火→土器を焼くという意味を導く。
字形の解釈をストレートに意味とするのは白川漢字学説の特徴である。そのため意味素の中に余計な意味が混入する傾向がある。焼はただ「やく」の意味であって、土器という意味素はない。
土器を焼くというのは土器を作ることであろう。「焼く」というのは物に火をつけて灰にする行為であって、土器を焼くの焼くとは意味が違う。
古典での燒の用例を見てみよう。
 原文:毋燒灰。
 訓読:灰を焼く毋(な)かれ。
 翻訳:灰を燃やしてはならない――『礼記』月令
燒は物を燃やす(やく)の意味で使われている。これを古典漢語ではthiɔg(呉音・漢音でセウ)という。これを代替する視覚記号として燒が考案された。
燒は「堯ギョウ(音・イメージ記号)+火(限定符号)」と解析する。垚は土を三つ重ねて「高く上がる」というイメージを示す記号。堯は「垚ギョウ(音・イメージ記号)+兀(人体に関わる限定符号)」を合わせて、背の高い人を暗示させる(375「暁」を見よ)。堯も「高く上がる」というイメージを表しうる。燒は煙や火の粉が高く上がる情景を設定した図形である。燃やすという行為が原因となって、煙や火の粉が上がるという結果が起こる。原因と結果を入れ換えるレトリックにより「やく」という意味の言葉が造語され、造形された。