「証」
旧字体は「證」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は登。證はもと徴(あかし、しるし)と通用する字であった。證とは徴験のある語をいい、“あかし、あかす、しるし” の意味に用いる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では登からの説明になっていない。「あかし」の意味は徴の仮借としている。字源の体をなしていない。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉えて、語源的に意味を説明する方法である。ただし意味は言葉の使われる文脈にあるから、文脈に当たることが先決である。次の用例がある。
①原文:其父攘羊、而子證之。
 訓読:其の父羊を攘(ぬす)み、而(しか)して子之を証す。
 翻訳:父が羊を盗むと、その子がこれをお上に告げた――『論語』子路
②原文:所以證之不遠
 訓読:之を証する所以は遠からず
 翻訳:そのことを証拠立てるものは近くにある――『楚辞』九章・惜誦

①は役所に事実を申し立てる、事実をはっきり告げるという意味、②はあかしを立てる意味に使われている。これを古典漢語でtiәng(呉音・漢音でショウ)という。これを代替する視覚記号として證が考案された。
證は「登(音・イメージ記号)+言(限定符号)」と解析する。登は高い所にのぼる意味だが、そのコアには「上に上がる」というイメージがある。したがって證はお上に言葉を申し上げて告げる状況を設定した図形である。
事実をはっきり告げるという意味から、うそではない根拠を開示すること、すなわち「あかしを立てる」「あかし」という意味に転義する。