「照」

白川静『常用字解』
「形声。音符は昭。昭はもとの字は卲に作り、降下する神霊を迎えて拝む形で、霊威の明らかなことをいい、あきらか、かがやくの意味となる。そのかがやく光を示すために、昭の下に火(灬)を加えた。四方を照らすことをいう」

[考察]
昭の字解の疑問については887「昭」で述べた。
照は「てる」の意味で、光という物質的なものの現象である。これが「霊威の明らか」という意味から転義するだろうか。この「明らか」は「はっきりと現れている」 ということであろう。
字形から意味を引き出すのは無理である。意味とは「言葉」の意味であって「字形の意味」ではない。意味は言葉の使われている文脈に尋ねるべきである。照は古典に次の用例がある。
 原文:月出照兮 佼人燎兮
 訓読:月出でて照ショウたり 佼人燎リョウたり
 翻訳:月が出て明るく照らす 美人の顔は赤く輝く――『詩経』陳風・月出
照は光が明るくてる意味で使われている。これを古典漢語ではtiɔg(呉音・漢音でセウ)という。これを代替する視覚記号として照が考案された。
照は「昭(音・イメージ記号)+火(限定符号)」と解析する。召は「⁀形や‿形に曲がる」というイメージがあり、このイメージは「反り返る」というイメージ、また「跳ね返る」というイメージにも転化する。昭は日の光が反射して周辺を明るく照らす状況を暗示させる(887「昭」を見よ)。火は火に関わる限定符号。限定符号は図形的意匠を作るための場面設定の働きもある。火に関する場面が設定され、火の光で明るく照らす情景を暗示させる。これは図形的意匠であって、意味そのものではない。意味は上記の「光が明るくてる」であって、火は意味素に入らない。
昭は「明るい」という形容詞、照は「明るく照らす、照る」という動詞に使い分ける。