「彰」

白川静『常用字解』
「形声。音符は章。章は入れ墨をするときに使う針(辛)の針先の部分に、墨だまりのある計で、あきらかの意味がある。色や形の美しいことを示す記号のような文字の彡を加えた彰は、入れ墨の文様の美しいことから“あきらか” の意味となる」

[考察]
章の字形の解剖の疑問については898「章」で述べた。字形の解釈だけでなく、意味の展開にも疑問がある。入れ墨の文様が美しいという必然性があるだろうか。それが「明るい」という意味になるだろうか。
彰の古典における用例を見てみよう。
①原文:鳥行而無彰。
 訓読:鳥行きて彰無し。
 翻訳:鳥が行った後には足跡の模様が地面についていない――『荘子』天地
②原文:義理之道彰。
 訓読:義理の道彰らかなり。
 翻訳:正しい筋道ははっきりしている――『呂氏春秋』懐道
③原文:以彰有德。
 訓読:以て有徳を彰(あらは)す。
 翻訳:徳のある者を表彰する――『孟子』告子下

①はあや・模様の意味、②ははっきりしている(明らか)の意味、③ははっきりと姿(存在や事跡・功績など)を人前に現し出す意味に使われている。これを古典漢語ではtiang(呉音・漢音でシヤウ)という。これを代替する視覚記号が彰である。
彰は「章(音・イメージ記号)+彡(限定符号)」と解析する。章は「明るい」「明らか」というイメージがあり、「はっきりと目立つ」というイメージに展開する( 898「章」を見よ)。彡は飾りやあや・模様に関係があることを示す限定符号。したがって彰ははっきりと目立つ模様を暗示させる。この図形的意匠によって上の①②の意味をもつtiangを表記する。
「はっきり目立つ」というイメージは「はっきり現れる」というイメージに展開し、③の意味を派生する。表彰・顕彰の彰はこれである。