「償」

白川静『常用字解』
「形声。音符は賞。賞は音符 が尚の字であるが、もとの字は商、あるいは𧶜に作り、たまうの意味に用いる。賞が“つぐなう、むくいる”の意味に用いるときは償といい、説文に“還すなり”という」


[ 考察]
賞を尚から説明できず、商と同字とされる𧶜から説明している。賞は「たまう」の意味から「つぐなう」の意味になり、「つぐなう」の意味の場合は償と書くという。
「たまう」からなぜ「つぐなう」の意味に転じるのかはっきりしない。字源説としては不十分である。
償は古典に次の用例がある。
 原文:以死償節。
 訓読:死を以て節に償ふ。
 翻訳:損なわれた節義を死でつぐなう――『荘子』庚桑楚
償は借金・損失・罪などに対して相応のもので報いるという意味で使われている。これを古典漢語ではdhiang(呉音でジヤウ、漢音でシヤウ)という。これを代替する視覚記号が償である。
償は「賞(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。賞は功績(A)に相当する金品(B)を与えることで、「AとBがぴったり当たる」というコアイメージがある(918「賞」を見よ)。償は借金や罪(A)に対して、それに相当する金や罰(B)を返す状況を暗示させる。
賞と償は同源の言葉で、コアにあるイメージも共通であるが、それが使われる文脈が異なる。だから違った意味として実現される。