「鐘」

白川静『常用字解』
「形声。音符は童。“かね、つりがね” をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では童からの説明ができず、字源を放棄している。
鐘は古典に次の用例がある。
 原文:鐘鼓既設 一朝饗之
 訓読:鐘鼓既に設く 一朝之に饗せん
 翻訳:鐘と太鼓はととのった しばし彼をもてなそう――『詩経』小雅・彤弓
鐘は打楽器の名である。十二個で一組とする楽器で、編鐘とも呼ばれる。古典漢語ではtiung(呉音でシュ、漢音でショウ)といい、視覚記号として鐘が考案された。
古人は「鐘は動なり」と語源を説いている。動は「上から下に突き抜く」というコアイメージをもつ。動は重を基幹記号とし、重には東が含まれている。東がコアイメージの源泉である。
鐘は「童(音・イメージ記号)+金(限定符号)」と解析する。童は東を含み、「突き通る」「突き抜く」というイメージがある(「童」で詳述)。このイメージは「中が突き抜ける」「筒抜けになる」というイメージにも展開する。鐘は中を筒抜けにした金属製の楽器を暗示させる図形である。
寺で時を報じたり、また合図をしたりする道具(つりがね)はアナロジーによる転義である。