「上」

白川静『常用字解』
「指事。掌の上に指示の点をつけて、掌の上を示し、“うえ” の意味を示す。掌の上の意味から、すべてものの“うえ、うえのほう”の意味となる」

[考察]
上の字形が掌という具体的な物の形にはとうてい見えない。掌のうえの意味から「うえ」の意味になったというのも解せない。
漢字の成り立ちを説明するのに六書(象形・指事・会意・形声・仮借・転注)が使われるが、これだけでは収まり切れないものもある。象徴的符号という用語(操作概念)を導入したい。「何」という具体物ではなく、「如何(いかん、どのよう)」という状態・様態を暗示させる符号である。上は、下の長い線の上に短い線が乗っている状況を暗示させる象徴的符号である。これで「下のものの上に乗る」というイメージを表している。
古典漢語では「うえ」をdhiang(呉音でジヤウ、漢音でシヤウ)という。古人は「上は尚なり」と語源を説く。尚は「上に高く上がる」というコアイメージがある。尚だけではなく揚・場とも同源であり、また乗・昇・蒸・登などとも近く、これらは「上に(高く)上がる」というコアイメージがある。
「上に高く上がる」というコアイメージをもつ言葉がdhiangであり、具体的文脈で「うえ」と「あがる」の二つの意味が実現される。↑の形(垂直方向)に移っていく行為に視点を置くと「あがる」という動詞、あがった最終点の位置に視点を置くと「うえ」という名詞になる。