「丈」

白川静『常用字解』
「会意。十と又とを組み合わせた形。十は木の枝の形で、又は手の形。手に木の枝を持ち、それを支えとするもので、杖(つえ)のもとの字である」

[考察]
680「支」の項では「十と又とを組み合わせた形。十は木の枝。又は手の形。支は小枝を手で持つ形で、枝のもとの字」とあり、字形から説くと丈と支の区別がつかない。白川漢字学説には言葉という視点がなく、字形から意味を導く方法である。丈と支の混同は字形主義の立場に由来する。言葉という視座が必要である。
古人は「丈は長なり」と語源を説いている。dhiang(丈)という言葉は長や常と同源であり、「長い」というコアイメージをもつ語である。丈は長さの単位に用いられる。長さを十進法で数え、寸の10倍を尺、尺の10倍を丈とする。丈は比較的長い長さの単位である。
図形の丈もこれと見合って考案された。丈は「十+又」と分析できる。手を使って長さを計るのが寸であり、尺であるが、丈もこれの延長であるので、又(手)をイメージ補助記号とする。十は文字通り10という数を表す。尺を十回計れば丈という長さの単位になる。
丈は「長い」というイメージがあるので、長老を丈人、成人男子を丈夫ジョウフという。立派な体格の男子は大丈夫である。日本では「じょうぶ」「だいじょうぶ」と読み、元気がよい、しっかりしているという意味とする。頑丈・気丈もこれと同じ。