「条」
正字(旧字体)は「條」である。

白川静『常用字解』
「会意。攸ゆうと木とを組み合わせた形。攸は人と水(水滴の形)と攴(攵)とを組み合わせた形で、人の背後に水をかけて滌い、身を清めること、みそぎをいう。木はそのとき使用する木の枝や葉を束ねたものである。“えだ、長い枝” がもとの意味」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意の手法で説くのが特徴である。攸(みそぎ)+木→みそぎに使う木の枝葉→「えだ、長い枝」という意味を導く。
攸に禊ぎという意味があるだろうか。そんな意味はない。あり得ない意味から別の意味を引き出そうとしている。だいたい禊ぎに使う木の枝とは何のことか。人の背後に水をかけることが攸だというから、木の枝で水をかけるのであろうか。しかし禊ぎとは川などに入って体を洗うことではあるまいか。
白川漢字学説には言葉という視点がなく、字形から意味を求めようとする。しかし意味とは「言葉の意味」であって字形に属する概念ではない。意味は言葉が使われる文脈に求めるべきである。條は次の用例がある。
①原文:遵彼汝墳 伐其條枚
 訓読:彼の汝墳に遵ひ 其の条枚を伐る
 翻訳:汝の川の堤に沿うて 細枝と太枝を切る――『詩経』周南・汝墳
②原文:若網在綱、有條而不紊。
 訓読:網の綱に在るが若(ごと)く、条有りて紊(みだ)れず。
 翻訳:網が太綱の間に張られているように、筋道がきちんと立って乱れない――『書経』盤庚
③原文:條其歗矣 遇人之不淑矣
 訓読:条として其れ歗(うそぶ)く 人の不淑に遇へば
 翻訳:長々と恨みの口笛を吹く 男の冷たい仕打ちのせいで――『詩経』王風・中谷有蓷

①は細長い枝の意味、②は筋道の意味、③は細長いさま(細長く続くさま)の意味で使われている。これを古典漢語ではdög(呉音でデウ、漢音でテウ)という。これを代替する視覚記号として條が考案された。
條は「攸ユウ(音・イメージ記号)+木(限定符号)」と解析する。攸は「人+|+攴(攵)」に分析できる。金文では|が┇になっている。|や┇は縦に線条的に(または点々と)長く延びることを示す象徴的符号である。攴は動作を示す限定符号。したがって攸は人の背中に水を線条的に(点々と)流す情景を設定した図形。この意匠によって「細長い」というイメージを表すことができる(808「修」を見よ)。條は木の細長い部分、つまり「えだ」を暗示させる。
意味はコアイメージによって展開する。「細長い」というコアイメージは「線条(筋)をなす」というイメージにも転じる。細長いものの意味(鉄条の条)、また、細長い筋をなすものを一条、二条と数える助数詞の用法が生まれる。また、筋をなして並べたものの意味(条項の条)を派生する。また筋道の意味(上の②)も生まれる。「細長い」というコアイメージがそのまま文脈に現れることもある(上の③)。