「畳」
正字(旧字体)は「疊」である。

白川静『常用字解』
「会意。畾と宜とを組み合わせた形。 畾は正しくは晶で、多くの玉の形。宜は俎の上に肉を二つ並べて置いた形。玉と肉を重ねておくので、“かさなる、たたむ”の意味となる」

[考察]
 字形から意味を引き出すのが白川漢字学説の方法である。晶(多くの玉)+宜(俎に肉を二つ並べる)→玉と肉を重ねて置く→かさなる・たたむという意味を導く。
晶は903「晶」では「星の光の形」とあり、不統一。「玉と肉を重ねて置く」というのはどういう状況か。常識的には考えにくい。
字形から意味を導くのは無理がある。というよりも誤った方法である。意味とは「言葉の意味」であって、字形から来るものではなく、言葉の使われる文脈から来るものである。疊は次の用例がある。
 原文:莫不震疊
 訓読:震畳せざるは莫し
 翻訳:ぶるぶると何度も重ねて身震いせぬものはなかった――『詩経』周頌・時邁
疊は上に積み重ねる意味である。これは物理的な物の重なりの意味だが、①では比喩的に事態の重なりという意味で使われている。これを古典漢語ではdep(呉音でデフ、漢音でテフ)という。これを代替する視覚記号として疊が考案された。
疊は「畾+宜」に分析する。畾は雷や壘(=塁)に含まれる記号で、三つの田の形をした物を重ねて、「いくつも重ねる」というイメージを示す象徴的符号である。宜は建物の中で供え物が段々と重なって供えてある情景を設定した図形で、これも「重なる」というイメージを示す記号になる。「畾+宜」を合わせた疊は、いくつかのものが上に積み重なる状況を暗示させる図形である。
Aの上にBを重ねるというイメージから、折り畳むという意味に展開する。日本では上に重ねて敷くもの→たたみという意味で使われる。