「縄」
正字(旧字体)は「繩」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は黽よう。昜ようが場じょうになるように、黽の音が変化したものである。大きななわを索といい、細く長い“なわ”を縄という」

[考察]
白川漢字学説は形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では黽からの説明ができず、字源は放棄された。
黽にヨウの音はない。黽の音はボウ、またはビンである。『説文解字』では「蠅の省声」としている。だから蠅ヨウの略体が音符と見てよい。
繩は「蠅ヨウの略体(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。黽はある種のカエルを描いた図形である。腹の膨れたカエルを比喩として、「黽+虫」を合わせた蠅でハエを暗示させた。ハエの特徴は飛ぶことにもある。ハエは飛ぶのが速く、多くのハエが飛ぶ姿は、ぐるぐると∞の形に飛び回っているように見える。だから蠅の記号で「∞の形をなす」というイメージを示すために使うことができる。かくて繩は糸や紐を∞の形によじり合わせたもの、すなわち「なわ」を暗示させる。