「醸」
正字(旧字体)は「釀」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は襄。釀は死者の衣の胸もとに、二つのᄇ(祝詞を入れる器の形)と呪具の工を四個(㠭)置く形で、胸もとが盛り上がり、ふくらむの意味となる。酉は酒樽の形。酵母がふくらみ熟することを醸という」

[考察]
白川漢字学説は形声の説明原理がなく会意的に説く特徴がある。襄(胸元が盛り上がり膨らむ)+酉(酒樽)→酵母が膨らむという意味を導く。
襄の字形分析と意味の疑問については938「壌」、941「譲」で述べたので繰り返さない。
釀は次の用例がある。
 原文:乃多釀酒。
 訓読:乃ち多く酒を醸す。
 翻訳:そこで多目に酒を造った――『史記』孟嘗君列伝
釀は発酵させて酒を造る意味である。これを古典漢語ではniangといい、釀と表記する。
釀は「襄(音・イメージ記号)+酉(限定符号)」と解析する。襄は「中に物を詰めて柔らかくする」「中に割り込ませる」というイメージがある(938「壌」を見よ)。酉は酒の意味領域に限定する符号である。釀は原料に酒のもとを入れて柔らかくし、発酵させて酒を造る情景を設定した図形である。