「飾」

白川静『常用字解』
「会意。飤と巾とを組み合わせた形。飤は人の前に食器のある形で、食べ物、食べるの意味となり、食のもとの字である。その食事のとき、体の前につけている巾(ふきん)を食器にあてて汚れを刷き拭うことを飾といい、“ぬぐう、きよめる”の意味となる」

[考察]
字形の分析を誤っている。飾と食は明らかに音のつながりがあるから形声のはず。「飤+巾」ではなく「食+人+巾」と分析すべきである。飤は食の原字というが、飤は食からできているから原字ではあり得ない。食に「養う」「餌をやる」の意味があり、この場合はシと読む。食シ→飤シ→飼と字体が変化する(719「飼」を見よ)。
飾には飤を含まない。「食ショク(音・イメージ記号)+人(イメージ補助記号)+巾(限定符号)」と解析する。これがどんな意匠をもつかを検討する前に、飾の古典における用例を見てみよう。
①原文:君子不以紺緅飾。
 訓読:君子は紺緅カンシュを以て飾らず。
 翻訳:君子は衣服を紺色や赤色の布で飾らない――『論語』郷党
②原文:羔裘豹飾 孔武有力
 訓読:羔裘に豹の飾り 孔(はなは)だ武にして力有り
 翻訳:黒い羊の皮衣に豹の飾り物 とても勇ましく力が強い――『詩経』鄭風・羔裘
 
①はかざる意味、②はかざり物の意味である。これを古典漢語ではthiәk(呉音でシキ、漢音でショク)という。これを代替する視覚記号として飾が考案された。
飾は上記の通り分析する。食がコアイメージを提供する記号である。食は「自然のものに人工を加える」「手を加える」というイメージがある(944「食」を見よ)。巾は布と関係があることを示す限定符号。飾は布地に手を加えて綺麗にする情景を設定した図形である。手を加えてうわべをよく見せることが「飾る」ということである。うわべを取り繕ってごまかすという意味にもなる。これが扮飾・虚飾の飾である。為(手を加える)から偽(いつわる)へ転義するのと似ている。