「織」

白川静『常用字解』
「形声。音符は戠。戠は戈に飾りをつけた形で、しるしとするという意味があった。織は織物であるが、特に模様のある織物で、織文という。戠が織のもとの字である」

[考察]
戠が織の原字だという。戠は「しるしとする」の意味で、織は織物、特に模様のある織物の意味という。戠から織への意味展開の筋道がはっきりしない。戠が織物の意味というのは不自然である。
古典における織の用例を見てみよう。
 原文:織席以爲食。
 訓読:席を織りて以て食と為す。
 翻訳:むしろを織って生計を立てている――『孟子』滕文公上
 織は布を織るという意味で使われている。これを古典漢語ではtiәk(呉音でシキ、漢音でショク)という。これを代替する視覚記号として織が考案された。
織は「戠ショク(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。戠については744「識」で既述。戠は「音+戈」に分析する。音は音楽の音とは別で、古い字形では杙のような標識の形である。これに限定符号の戈(武器や道具と関係があることを示す)を添えた戠は、道具で目印(標識)を打ちつける情景を設定した図形。この意匠によって「見分けるための目印」「目印で区別する」「区別して見分ける」というイメージを表す記号とする。したがって織は縦糸と横糸の柄を見分けて、糸を組み合わせる情景を設定した図形。この意匠によって上記の意味をもつtiәkを表記した。