「震」

白川静『常用字解』
「形声。音符は辰。辰は蜃(はまぐり)のもとの字で、はまぐりなどの貝が足を出して動いている形で、動くの意味がある。説文に“劈歴、物を振はす者なり” とあり、かみなりのとどろきの意味とする。もとは“かみなり、かみなりがとどろく”の意味であったが、かみなりのとどろきによって“ふるう、ふるえる”の意味となる」

[考察]
ほぼ妥当な字源説である。ただし字形から意味が出るのではなく、言葉の使われる文脈から意味を判断し、理解するのである。震は古典で次の文脈がある。
①原文:王奮厥武 如震如怒
 訓読:王厥(そ)の武を奮ふこと 震ふが如く怒るが如し
 翻訳:王が武勇を示す様は 雷がびりびり震わすよう たけり狂うよう――『詩経』大雅・常武
②原文:九月癸酉地震。
 訓読:九月癸酉地震ふ。
 翻訳:九月みずのととりの日に大地が震えた――『春秋』文公九年

①は稲妻(雷)がびりびりとふるえる意味、②は大地がふるえる意味である。両者を統括する意味は「弾力性があって小刻みにふるえる」ということである。これを古典漢語ではtien(呉音・漢音でシン)といい、これを震で表記する。
「弾力性があって小刻みにふるえる」という意味は振も震も共通であり、音も同じ。つまり二語はもともと同語であり、場面によって文字で使い分けるに過ぎない。
震は「辰(音・イメージ記号)+雨(限定符号)」と解析する。辰はシャコガイ科の一種である蜃(シャゴウ)の原字であるが、実体よりも形態や機能に重点がある。シャゴウが舌をしている姿から「(弾力性があって)ふるえ動く」というイメージが捉えられる(965「振」を見よ)。雨は雨や天体現象、また自然現象と関わることを示す限定符号である。かくて震は稲妻(雷)がびりびりとふるえる状況を暗示させる。