「髄」
正字(旧字体)は「髓」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は遀ずい。説文に“骨中の脂なり” とあり、骨のずい、骨髄をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では遀からの説明ができず、字源を放棄している。
遀は隨の俗字である。だから髓は「髓の略体+骨」と分析すべきである。しかし篆文では「隓+骨」となっている。隓は隋に含まれている。隓も隋も「崩れて決まった形がなくなる」「定形がなくぐったりとなる」というイメージがある(1003「随」を見よ)。しっかりあった形が崩れてぐしゃぐしゃな状態になることから、「柔らかい」というイメージに転化する。骨の中にある柔らかい物質を暗示させる。のち隓を隨の略体である遀に替えて髓となった。隨には「定形がなく、他のものにしがう」というイメージがある。したがって髓は骨の形のままに従う柔らかい物質を暗示させる。この図形的意匠によって、骨の中を満たす柔らかい組織、骨髄を表す。