「崇」

白川静『常用字解』
「形声。音符は宗。宗は諸氏の本宗・本家であるから、たっとぶ、大きいの意味がある。崇は山が高いの意味からすべて“たかい” の意味となり、その意味を人の上に移して、“たっとぶ、あがめる”の意味となる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴である。本家→たっとぶ・大きい→山が高いと意味を展開させるが、すっきりしない。宗に「たっとぶ」という意味はあるが「大きい」という意味はない。「たかい」の意味へつながらない。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉えて、語源的に意味を説明する方法である。意味を知るのは言葉の使われる具体的な文脈である。崇は次の文脈で使われている。
①原文:其崇如墉 其比如櫛
 訓読:其の崇(たか)きこと墉ヨウの如く 其の比(なら)ぶこと櫛の如し
 翻訳:それ[キビ]は城壁のように高く 櫛のようにびっしり並ぶ――『詩経』周頌・良耜
②原文:君子崇人之德。
 訓読:君子は人の徳を崇(たっと)ぶ。
 翻訳:君子は人の品格を尊ぶものだ――『荀子』不苟

①は山などが高くそびえ立つ(丈が高い)の意味、②は対象を高く見上げる(たっとぶ、あがめる)の意味で使われている。これを古典漢語ではdzïong(呉音でズウ、漢音でシュウ)という。これを代替する視覚記号として崇が考案された。
崇は「宗(音・イメージ記号)+山(限定符号)」と解析する。宗は「縦に筋をなす」「縦にまっすぐ通る」というイメージがある(804「宗」を見よ)。「縦に↓の形に通る」というイメージは、視点を変えれば、「上に↑の形に突き通る」というイメージに転化する。かくて崇は山が↑の形にそびえ立つ情景を暗示させる図形。
崇は山などが高くそびえることから、「高く上がる」というイメージが生まれる。これから高く見上げる→たっとぶ・あがめるという意味を派生する。