「寸」

白川静『常用字解』
「会意。又と一とを組み合わせた形。又は指を伸ばした右手の形で、その指の下にそえた一は、指一本という意味であろう。手の指一本の幅の長さを寸という」

[考察]
字形の解釈としては妥当な説である。しかし意味は字形から出るものではない。語源的に考える必要がある。なぜ一寸、二寸と長さを計る単位をts'uәn(呉音でスン、漢音でソン)というのか。陸徳明(隋・唐代の古典学者)は「指を按ずる(上からそっと押さえる)を寸と為す」と述べている。中国医学では手首から一寸の付近にある脈動箇所をts'uәnという。脈を診るときここをそっと押さえる。長さを計るときも脈を診るときも同じ動作をする。「上から下にそっと押さえる」というのがts'uәnという語のコアイメージと言える。忖度ソンタクの忖(相手の気持ちをそっと推しはかる)にこのイメージが生きている。また村にも寸のコアイメージが用いられている。
寸は「又(手の形)+一」を合わせて、長さを計るとき、手の指一本幅の長さを暗示させる図形である。この図形的意匠によって長さの単位であるts'uәnを表記する。