「成」

白川静『常用字解』
「会意。戈と丨こんとを組み合わせた形。丁は甲骨・金文では丨で、飾りの垂れている形である。成は戈の制作が終わると、飾りをつけて祓い清めることを示し、“成就する、なる、なす”の意味となる」

[考察]
字形分析に疑問がある。丨がなぜ飾りの垂れた形なのか、ぴんと来ない。「戈+丨」という単純な字形から、戈に飾りをつけて祓い清めるという意味が読み取れるだろうか。これから「成就する」という意味になるだろうか。意味展開に必然性がない。「丁」の項では丁を釘の形としている。本項でも素直に釘の形とすべきである。これでは説明がつかないので、丨にしたのであろう。
字形から意味を求めると無理な解釈が出てくる。意味は言葉の使われる文脈に求めるべきである。 成は古典で次の用例がある。
①原文:武王成之
 訓読:武王之を成す
 翻訳:武王がこれ[都]を完成させた――『詩経』大雅・文王有声
②原文:積土成山。
 訓読:土を積めば山と成る。
 翻訳:土を積み上げると山になる――『荀子』勧学

①はいろいろの経過をたどって最終的になし遂げる(仕上げる、仕上がる)の意味、②は経過をたどってある状態になる意味である。これを古典漢語ではdhieng(呉音でジヤウ、漢音でセイ)という。これを代替する視覚記号として成が考案された。
成は「丁テイ(音・イメージ記号)+戊(イメージ補助記号、また限定符号)」と解析する。928「城」で述べているが、もう一度振り返る。丁は釘の形であるが、実体に重点があるのではなく形態・機能に重点がある。釘は形態的には⏉の形であり、機能的には⏉の形や⏊の形(直角)に打ちつける。だから丁は「⏉の形や⏊の形に打ちたたく」というイメージを表す記号となる。戊は武器の一種であるが、道具や工具と見なしてよい。したがって成は道具でトントンと打ちたたく場面を設定した図形。これは築城の場面である。この図形的意匠によって、「仕上げてまとめる」というイメージを表すことができる。
「仕上げてまとめる」というコアイメージから①の意味が実現される。②はそれから展開したもの。また、すでに出来上がっているという意味(成案・成句の成)もコアイメージからの展開である。