「青」

白川静『常用字解』
「形声。音符は生。下部の丹は丹を採取する井戸の形で、青丹・朱丹はその井戸から採取された。丹は硫黄を含む土石で、絵の具の材料となった。青色の絵の具はこの丹を材料として作られた。青は“あお、あおい” の意味に用いる」

[考察]
字形を「生+丹」に分析するのは『説文解字』に従ったものであろうが、疑問がある。また「あお」の意味の由来を、丹にいろいろな色があるとして、『山海経』に見える青丹を根拠にしている。しかし注釈によると青丹は黒丹の意味だという(『漢語大詞典』)。だいたい丹は硫化水銀のことで、赤色の鉱物である。
また、白川は生を無視し、丹から意味を引き出そうとしている。これは漢字の造形法にかなっていない。形声文字は音符である生の部分が重要で、ここに意味の深層構造がある。言葉という視点がなく字形から意味を導く白川説は不十分である。
古人は「青は生なり。物の生ずる時を象る色なり」と語源を説いてる」(『釈名』)。青と生は同源であり、また晶・星・井とも同源である。これらは「汚れがなくすがすがしい(澄み切っている)」というコアイメージがある。物(生物、生命体)が発生する時のようなすがすがしい印象を与える色が青だというのが古人の捉え方である。これはよく青の語源を説明している。ちなみに英語のblueは印欧祖語の*bhlēwo-(明るい色の)に由来するという(『英語語義語源辞典』)。あお色は明るい色という印象から名づけられたようである。古典漢語のts'eng(青)が澄み切った感じの色から名づけられたのと発想が似ている。
青は「生+井(丼)」に分析する。篆書では「生+丹」になっているが、金文では丹の部分が井または丼になっている。生は生命が誕生したばかりで新しく生き生きしている状態から発想された言葉で、「汚れがなくすがすがしい(清らかに澄み切っている)」というコアイメージがある(1013「生」を見よ)。井は丼とも書かれ、井桁の形、または井戸の中に水のある形で、これも「清らかに澄む」というイメージをもつ(1010「井」を見よ)。青は生と井(丼)という二つの音・イメージ記号を合わせたもので、「すがすがしく澄み切っている」「汚れがなく清らか」というイメージを表すことができる。この図形的意匠によって「あお」という色の名、また「あおい」という色の状態を表現する言葉の表記となった。