「牲」
白川静『常用字解』
「形声。音符は生。祭祀のときに神に供える動物の“犠牲(いけにえ)” をいう。生きたまま供える生贄とするのが原則であり、供えてから堵殺した」

[考察]
「生きたまま供える牲贄」という追加説明があるから、生は「生きる」という意味に取るのであろう。白川漢字学説の特徴である会意的解釈に合う。
しかし形声の説明原理という観点から見ると不十分である。言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉えて意味を説明するのが形声の説明原理である。
牲は「生(音・イメージ記号)+牛(限定符号)」と解析する。生は「汚れがなくすがすがしい」「清らかに澄み切っている」というコアイメージがある(1013「生」を見よ)。牲は祭祀に供するため洗い清めた牛を暗示させる。この図形的意匠によって、汚れを払い清めて神に捧げるいけにえを意味する古典漢語sïeng(呉音でシヤウ、漢音でセイ)を表記する。