「婿」

白川静『常用字解』
「形声。音符は胥。説文に壻を正字とし、“夫なり”としている。子女の夫、“むこ”をいう」

[考察]
形声の説明原理がなく、会意的に説くのが白川漢字学説の特徴であるが、本項では胥からの説明ができず、字源を放棄している。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉え、語源的に意味を説明する方法である。コアイメージは音・イメージ記号に含まれ、婿では胥がコアイメージに関わる基幹記号である。
婿は「胥ショ(音・イメージ記号)+女(限定符号)」と解析する。胥を分析すると「疋+肉」となる。疋はショと読む場合とヒツと読む場合があり、言葉が違う(音義が違う)。胥ではショと読む疋である。疋は足(leg)を描いた図形。足という実体に重点を置くのではなく、形態・機能に重点がある。足は二本あるので、「一対をなす」「二つに分かれる」「▯-▯の形に並ぶ」というイメージを疋で表すことができる。「疋ショ(音・イメージ記号)+肉(限定符号)」を合わせたのが胥で、▯-▯-▯-の形に分かれて筋をなす蟹の肉を表した。胥も疋と同じコアイメージを表す記号になりうる。かくて婿は女と▯-▯の形に並ぶ(一対をなす)男を暗示させる。この図形的意匠によって「むこ」の意味をもつ古典漢語ser(呉音でサイ、漢音でセイ)を表記する。なお限定符号を士とする壻も図形的意匠は婿と同じである。