「製」

白川静『常用字解』
「形声。音符は制。制は茂った木の枝を刀(鋏)で切りそろえることをいう。衣を裁って衣服をつくることを製という」

[考察]
ほぼ妥当な字源説である。ただし字形から意味が出るわけではない。意味は言葉の使われる文脈から出る。製は古典に次の用例がある。
 原文:製芰荷以爲衣兮
 訓読:芰荷キカを製(た)ちて以て衣と為す
 翻訳:ヒシとハスを断ち切って衣とする――『楚辞』離騒
製は布などを裁ち切って衣を作る意味で使われている。これを古典漢語ではtiad(呉音でセ、漢音でセイ)という。これを代替する視覚記号が製である。
製は裁と意味が似ているが、製は制と同源で、「余分なものを断ち切る」というのがコアイメージである。素材を断って余分なものを切り捨て、程良く形を整えて衣を作ることである。裁は「途中で断ち切る」「程良い所で断ち切る」といのがコアイメージで、素材に切れ目を入れて衣を作ることである。二つに切り分けるというイメージから、決裁や裁判などの用法が生まれるが、製は製作・製造など物をこしらえる意味になる。
製は「制(音・イメージ記号)+衣(限定符号)」と解析する。制は余分に伸びた木の枝を切る情景を設定した図形で、「余分なものを切り離す」「二つに断ち切る」というイメージがある(1017「制」を見よ)。製は素材を断ち切って余分なものを捨て、形を整えて衣を作る状況を暗示させる図形。この図形的意匠によって、上記の意味をもつtiadを表記した。