「整」

白川静『常用字解』
「形声。音符は正。敕(勅)には束薪を打って整えるの意味がある。正には正すの意味がある。整はもと不揃いのものを揃えるの意味であるが、のちすべてことの不整合を“ととのえる、ただす” こと、そして“正しい状態にする”ことをいう」

[考察]
字形から意味を引き出すのが白川漢字学説の特徴である。敕(束薪を打って整える)+正(正す)→不揃いのものを揃えるという意味を導く。
敕に束薪を打って整えるという意味はない。そもそも束はすでにまとめて揃えたものであるから、不揃いのものを揃える意味を導くのは理屈に合わない。
意味は字形から出るものではなく、言葉の使われる文脈から出るものである。整は古典に次の用例がある。
 原文:整我六師 以脩我戎
 訓読:我が六師を整へ 以て我が戎を脩めよ
 翻訳:わが六つの兵団をととのえ わが武器を磨きなさい――『詩経』大雅・常武
整は乱れたものをきちんと整える意味である。これを古典漢語ではtieng(シヤウ、漢音でセイ)という。これを代替する視覚記号が整である。
整は「正(音・イメージ記号)+敕(イメージ補助記号)」と解析する。正は「曲がり・ゆがみをまっすぐにする」というイメージがある(1012「正」を見よ)。敕は「束(締めつける。音・イメージ記号)+攴(限定符号)」を合わせて、たるみがないように締めつける動作を暗示させる。したがって整はたるみや乱れを引き締めてきちんと正す状況を暗示させる図形である。この図形的意匠によって、上記の意味をもつtiengを表記する。