「税」

白川静『常用字解』
「形声。音符は兌。説文に“租なり”とあり、租税(年貢)をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴があるが、本項では会意的に説明がつかず、字源を放棄している。
税は古典に次の用例がある。
 原文:民之饑、以其上食税之多、是以饑。
 訓読:民の饑(う)うるは、其の上の税を食むの多きを以て、是(ここ)を以て饑う。
 翻訳:民が飢えるのはお上が多く税を取り過ぎるから、それで飢えるのだ――『老子』第七十五章
税は国が民の収入から徴収するもの(年貢、税金)の意味である。これを古典漢語ではthiuad(呉音でセ、漢音でセイ)という。これを代替する視覚記号だ税である。
税は「兌ダ(音・イメージ記号)+禾(限定符号)」と解析する。兌については60「鋭」で述べたが、もう一度振り返る。兌は「八+兄」に分析できる。極めて舌足らず(情報不足)な図形で、何とでも解釈できるが、脱ぐと関係があり、兌のグループ(脱・悦・説・閲・税・蛻など)を構成することを念頭に置くと、ほぼ妥当な解釈ができる。兄は兄弟のうち比較的年長のもので、頭の大きな人の図形で表される。しかし兌という図形では年齢は関係がなく、ただ子供を示していると考えてよい。 八は↲↳の形に左右に(両側に)分けることを示す象徴的符号である。何を分けるのかは図形に現れていないが、子供の衣服を左右に分けて脱がす情景と解釈できる。兌という図形的意匠によって、「外側のものを剝ぎ取って中身を取り出す」「中身を抜き出す」「中身が抜け出る」というイメージを表す記号になりうる(「脱」で詳述)。禾は穀物と関係があることを示す限定符号である。税は収穫した穀物の中から一部を抜き取る状況を設定した図形。この図形的意匠によって、上記の意味をもつthiadを表記した。