「積」

白川静『常用字解』
「形声。音符は責。責は賦貢(税)として納める物(貝)の上に印の木(朿)を立てる形で、賦貢として納める財物をいう。禾はいね、穀物類。賦貢として納める農作物を積という」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴である。責(賦貢として納める財物)+禾(穀物類)→賦貢として納める農作物という意味を導く。
しかしこんな意味が積にあるだろうか。そんな意味はない(『漢語大字典』「漢語大詞典」)。図形的解釈と意味を混同している。意味は字形から出るものではなく、言葉の使われる文脈から出るものである。積は次のような文脈で使われている。
 原文:穫之挃挃 積之栗栗
 訓読:之を穫(か)ること挃挃チツチツたり 之を積むこと栗栗たり
 翻訳:キビを刈る音ザクザクと キビを積むのはびっしりと――『詩経』周頌・良耜
積はつみ重ねる、つみ上げる意味である。これを古典漢語ではts'iek(呉音でシャク、漢音でセキ)という。これを代替する視覚記号として積が考案された。
積は「責(音・イメージ記号)+禾(限定符号)」と解析する。責は「積み重なる」というコアイメージがある(1051「責」を見よ)。積は刈り取った稲を集めて積み重ねる情景を設定した図形である。この図形的意匠によって「つむ」を意味するts'iekを表記した。
白川は「多くの積を集め積み上げて納入するので、“つむ、つみあげる、かさねる”の意味となる」と述べている。この意味展開は変である。税を納入するのに必ずしも「多くの積を積み上げる」とは限らないだろう。積を税と意味とするのがそもそもおかしい。