「績」

白川静『常用字解』
「形声。音符は責。責は賦貢(税)として納める物(貝)の上に印の木(朿)を立てる形で、賦貢として納める財物をいう。賦貢として納入する織物を績という」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなくすべて会意的に説く特徴がある。責(賦貢として納める財物)+糸→賦貢として納める織物という意味を導く。
責に「賦貢として納める財物」という意味もないし、績に「賦貢として納める織物」という意味もない。図形的解釈と意味が混同されている。
意味とは「言葉の意味」であって字形にあるのではない。言葉が使われる文脈から判断し把握するものである。績は古典に次の用例がある。
①原文:八月載績
 訓読:八月載(すなは)ち績(う)む
 翻訳:八月には麻糸をうむ――『詩経』豳風・七月
②原文:豐水東注 維禹之績
 訓読:豊水東に注ぐ 維(こ)れ禹の績
 翻訳:豊水が東に流れるのは 禹[夏王朝の始祖]の功績だ――『詩経』大雅・文王有声

①は麻などの繊維から糸を作る(うむ、つむぐ)の意味、②は成し遂げられて段々と積み重なる仕事やその成果(いさお)の意味である。これを古典漢語ではtsek(呉音でシャク、漢音でセキ)という。これを代替する視覚記号として績が考案された。
績は「責(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。責は「積み重なる」というコアイメージがある(1051「責」を見よ)。績は麻などの繊維を重ねて継ぎ足し、縒って長い糸を作る状況を暗示させる。この図形的意匠によって、上の①をもつtsekを表記した。
白川は「績が規定の通りによく納入されることを成績という。績は“糸をうむ、つむぐ”、また“いさおし、てがら”の意味にも用いる」と述べるが、なぜ税として納める織物から「糸をうむ」の意味になるのか分からない。