「節」
正字(旧字体)「節」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は卽。説文に“竹の約ふしなり”とあり、竹の節のあるところをいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴があるが、本項では卽からの説明ができず、字源を放棄している。
まずは古典における節の用例を見る。
①原文:旄丘之葛兮 何誕之節兮
 訓読:旄丘ボウキュウの葛 何ぞ誕(の)びたる節なる
 翻訳: 旄丘に生えてるクズは 何て節が伸びたことよ――『詩経』邶風・旄丘
②原文:不以禮節之、亦不可行也。
 訓読:礼を以て節せざれば、亦行ふべからず。
 翻訳:礼でけじめをつけないと、[人間・社会の調和は]うまく行かない――『論語』」学而
③原文:節用而愛人。
 訓読:用を節して人を愛す。
 翻訳:費用を節約して、民衆を愛する――『論語』学而

①は竹などのふしの意味、②は折れ目・切れ目をつける(範囲を超えないようにけじめをつける)の意味、③切れ目をつけて無駄な部分を省く意味である。これを古典漢語ではtset(呉音でセチ、漢音でセツ)という。これを代替する視覚記号として節が考案された。
節は「卩セツ(音・イメージ記号)+皀(イメージ補助記号)+竹(限定符号)」と解析する。卩がコアイメージを提供する基幹記号である。卩は跪く人の図形である。跪くと足は∠の形になる。|が∠の形になることは折れ目・切れ目がつくことである。だから卩は「折れ目・切れ目」というイメージを表すことができる。また直線に切れ目がつくと―|―の形になる。これは|ー|ー|の形でも表せる。皀は器に盛ったごちそうの形。なぜこれをイメージ補助記号として添えたかというと、ごちそうの前に跪いた人の足に焦点を当てたもの。これによって∠の形に折れ目・切れ目がつくというイメージをはっきりさせた。竹は竹に関わる限定符号。かくて節は|ー|ー|の形に折れ目・切れ目のついた竹のふしを暗示させる。∠の形、∧の形、―|―の形、|―|―|の形などの節目のついたことをtsetというのである。
意味はコアイメージによって展開する。「折れ目・切れ目」というイメージから、竹の節だけではなく、節目のあるものの意味(関節の節)、一段ずつ区切れたものの意味(音節・文節の節)、時間の切れ目の意味(時節・季節の節)、割符(符節・使節の節)に展開する。また、「折れ目・切れ目をつける」というイメージから上の②の意味(節制・調節の節)、③の意味(節約・節倹の節)に展開する。ここから、勝手な行動にけじめ・折り目をつけるものの意味(礼節・節操の節)も派生する。
白川は竹の節に刻みを入れて割符にしたので、符節→使節となり、「それよりすべての人の行動を規定する語となって、節度・節操の意味となり、節制の意味から、節倹・節約の意味となる」という。言葉の深層構造を捉える発想がないので、割符から意味展開を説明している。