「川」

白川静『常用字解』
「象形。流れている水の形。三すじになって流れている水の形で、勢いようく流れる大きな水の流れをあらわしている。小さな水の流れの形は水である」

[考察」
川と水の違いを字形から説明しようとしているが、意味は字形から来るものではない。言葉の使われる文脈から判断し理解されるものである。
古人は「川は穿センなり。地を穿ちて流るるなり」(『釈名』)と語源を捉えている。これは正当な語源説で、川・穿・串(セン・カン)、また貫などは同源の語で、「貫く」というコアイメージがある。地面を貫いて水を通すものを川というのである。一方では、川は筋をなすものであり、それに沿って水が筋をなして流れるから、「筋道やルートに従う」という二次的イメージも生まれた。このイメージから順・巡・訓・馴などが派生する。
ちなみに英語のriverは印欧祖語のrei-(切る、裂く)に由来するという(『スタンダード英語語源辞典』)。流れが土地を切り裂く、あるいは、切り裂いてできた水道というイメージであろう。そうすると「川は穿なり」の語源説と一脈通ずる。