「繊」
正字(旧字体)は「纖」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は韱せん。㦰は二人を並べて戈で首を切る形で、殲滅するの意味。㦰に韭の形を加えた韱は、細かくしたものの意味がある。細い糸を繊といい、“ほそい、こまかい”の意味となる」

[考察]
字源説としてはほぼ妥当である。ただし白川漢字学説には形声の説明原理がないので、あくまで会意的に字形から意味を引き出す手法が取られる。だから「細い糸」の意味を導くが、こんな意味はない。
纖は古典で次の用例がある。
①原文:厥篚玄纖縞。
 訓読:厥(そ)の篚は玄、繊縞
 翻訳:貢ぎ物を入れる箱は黒く、貢ぎ物は細い白絹――『書経』禹貢
②原文:被文服纖
 訓読:文を被り繊を服す
 翻訳:あや絹の衣を被り 細絹の衣を着ける――『文選』巻三十三・宋玉「招魂」

①は細い意味、②は細い絹糸で織った織物の意味である。これを古典漢語ではsiam(呉音・漢音でセム)という。これを代替する視覚記号しとして纖が考案された。
纖は「韱(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。㦰は「从(人二つ)+戈(ほこ)」を合せて、人を刃物で二つに切断する情景で、「断ち切る」というイメージを示す。断ち切ると小さい部分に分かれるから、「細かい」というイメージに転化する。「㦰セン(音・イメージ記号)+韭(限定符号)」を合せた韱は韮(にら)を細かく切る情景。「細かい」は「細い」のイメージでもある。纖は細い糸筋を暗示させる。この意匠によって①の意味をもつsiamを表記した。「人を切る」や「ニラを切る」は図形的意匠を作るため具体的な場面を設定したものである。