「租」

白川静『常用字解』
「形声。音符は且。且は先祖を祭るときにお供えを置く俎の形。且まないたにのせた穀物の類(禾)を租といい、“みつぎ、年貢” の意味に用いる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴である。且(俎)+禾(穀物)→俎にのせた穀物の類という意味を導く。
「俎にのせた穀物」が年貢の意味になるとは解せない。「その(俎にのせた)お供えは祭祀のために使用する物として納めさせたものであるが、それがのち租税となった」と説明されているが、これが「租税の起源」とは理解し難い。
古典における租の用例を見てみよう。
 原文:君立三等之租。
 訓読:君、三等の租を立つ。
 翻訳:君主は三ランクの税金を設けた――『管子』山国軌
租は税金、年貢の意味で使われている。これを古典漢語ではtsag(呉音・漢音でソ)という。これを代替する視覚記号が租である。
古人は「租は積なり」と語源を捉えている。阻・祖・組などは一連の同源語で、「重なる」というコアイメージがある。租は積み重ねた穀物という発想から生まれた語である。別の発想から生まれた語に税がある。これは収穫から一部を抜き取った穀物という発想である。年貢(税金)に対して二つの語があるのは発想の違いである。
租は「且シャ・ショ(音・イメージ記号)+禾(限定符号)」と解析する。且は「(段々と上に重なる」というイメージがある(1102「阻」、1103「祖」を見よ)。禾は穀物と関係があることを示す限定符号。したがって租は積み重ねた穀物を暗示させる。字形から意味を求めると「積み重ねた穀物」が年貢とは限らないが、意味から字形を見るのが正しい漢字の見方である。年貢を徴収する場面を想像すれば、年貢米は袋や俵に詰められて積まれたであろうと想像できる。