「措」

白川静『常用字解』
「形声。音符は昔。説文に“置くなり”とは赦すこと。措置とは手足を伸ばして安らかにしていること、そのような状態になるようにことを処理することをいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では昔からの説明ができていない。字源を放棄した形である。措置に「手足を伸ばして安らかにしていること」という意味があるのか疑問。また「そのような状態になるようにことを処理すること」とはどういうことがよく分からない。
字形からは意味は出てこない。言葉の使われる文脈を尋ねるしかない。措は次のような用例がある。
①原文:措杯水其肘上。
 訓読:杯水を其の肘の上に措(お)く。
 翻訳:水の入った杯を彼の肘の上に載せて置いた――『荘子』田子方
②原文:其所措必勝。
 訓読:其の措く所必ず勝つ。
 翻訳:[戦う者が]手を下すと必ず勝つ――『孫子』形

①は上に重ねて置く意味、②は何かの上に手を加えて処置する意味である。これを古典漢語ではts'ag(呉音でス、漢音でソ)という。これを代替する視覚記号として措が考案された。
措は「昔(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析する。昔は「上に重ねる」というイメージがある。これは空間的イメージだが昔(むかし)では時間的イメージとして使われている。空間的イメージと時間的イメージは相互転用できる。措は物を上に重ねて置く状況を暗示させる。